
こんにちは。祁答院蒸溜所、杜氏の山下です。
今回も、蔵案内の際に、お客様より「おお~!」と思うような質問をいただいた『焼酎のなぜ?』についてご紹介したいと思います。
芋焼酎は、米麹に蒸したさつま芋を掛けて、焼酎モロミを造るのですが、使用するさつま芋の量は、「米麹1」に対して「5倍」の量を使用します。

ここで、お客様より、「なぜ1:5の割合なの?」という質問を頂きました。
まずは、米麹の話からになりますが、そもそも、「何で芋焼酎なのに米麹なの?」と思われると思います。
何で芋焼酎なのに、「米」麹なの?
一般的に芋焼酎は、米を麹の原料に使用します。
麹にさつま芋を使わない理由は、さつまいもが他の米や麦の穀類と比べ、水分が多く含まれる事で、麹菌が繁殖しにくく、腐敗してしまうリスクが高い。このため、麹として使用することが困難だからです。
現在は、技術の進歩により、芋麹の焼酎(全量芋焼酎)も造られていますが、今でも、芋焼酎は米麹で製造されたものが主流です。
芋焼酎「米麹1:さつま芋5」の原料割合の謎
では何故、1:5の割合なのか?他の割合でも良いのでは?と思えてきますね。
まず、米焼酎や麦焼酎では、麹1に対して、掛原料は2倍の量を使用します。
芋は何故5倍なのか?
理由は大きく2つあります。
さつまいもの水分とデンプン量
まず1つめは、芋の水分が関係しています。
前述の麹での話と重複しますが、米や麦の水分は、だいたい10~12%位ですが、芋は、品種によって色々ですが、60~70%位あります。
お客様の多くは、さつま芋はでんぷんのかたまりだと思っていらっしゃるようですが、実は、大半は水分なのです。その為、酵母菌がアルコールを生成するために必要なでんぷんが、他の穀類と比較して少ないので、5倍の量が必要になります。

芋かけの様子。祁答院蒸溜所では1回の仕込みで1,500kgの芋を使用します。
芋かけでは醪(もろみ)にムラが出ないように、その後の発酵がよりよく進むために蔵人2人がかりでよく混ぜ合わせていきます!
芋焼酎ならではの風味を出す黄金比
2つめは、焼酎の味や香りに関係しています。
芋焼酎の甘い香りは、麹由来のものが多く、芋の割合により、大きく影響します。
まず、1:1の割合で仕込んだ場合、勿論、でんぷんが少ない為、アルコールもあまり生成されませんが、香りは、米麹由来の甘い香りが強く、少し甘ったるい酒質になります。
逆に、1:10の割合で仕込んだ場合は、あまり甘さを感じない、スッキリとドライな酒質になります。甘い芋を多く使っているのに、不思議ですよね。
これは、さつま芋の中に含まれるある物質が影響しています。
芋の中には、「テルペン」と言う物質があるのですが、熱を加える(蒸す)ことで、「MTA(モノテルペンアルコール)」という物質に変化します。この成分は、柑橘類や花のような香り成分の為、芋を多く使用したほうが、スッキリとした印象を受けやすいのです。

蒸し芋の様子。蒸したさつま芋は柔らかく、甘さも増します!
その為、麹由来の甘い香りと、芋由来のフルーテイーさの一番いいバランスが、1:5の割合なのです。勿論、好みもありますが・・・。まさに黄金比なのです。
いかがでしたか。
祁答院蒸溜所は、鹿児島の里山でこだわりの芋焼酎「野海棠」を造っている焼酎蔵です。
随時、蔵見学も行っていますので、ぜひお気軽にお越しくださいね!
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鹿児島の森と湖と温泉の町より~祁答院蒸溜所(けどういんじょうりゅうしょ)~